iPhoneでPDFに署名する方法——標準機能でできること、アプリが要る場面
iPhoneは、追加アプリなしでPDFにサインを入れられます。ただ、その機能はかなり見つけにくい場所にあります。ここでは標準の「マークアップ」で署名する手順を順に、それが面倒になるケース、そして署名したい書類がまだ紙のままのときにどうするかをまとめました。
方法1:「ファイル」AppでPDFに署名する(標準機能・無料)
PDFがすでにiPhoneの中にあるなら——Safariでダウンロードした、メッセージから保存した、iCloud Driveに入っている——iOSのマークアップで十分です。アプリもアカウントも不要で、どこにもアップロードされません。
- 「ファイル」Appを開き、PDFをタップして表示します。
- 右上のマークアップボタン(ペン先のアイコン)をタップします。iOSのバージョンによっては共有ボタンの中にあります。
- マークアップのツールバーで「+」をタップし、「署名」を選びます(iOS 17以降は「署名を追加または削除」)。
- 線の上に指でサインし、「完了」をタップします。iPhoneを横向きにすると、書くスペースがぐっと広がります。
- 署名がページ上に現れます。ドラッグして位置を決め、青いハンドルで大きさを調整し、「完了」で署名済みPDFを保存します。
一度書いた署名はiOSが記憶します。次回は「+」→「署名」に保存済みのものが表示されるので、タップするだけでページに置けます。フルネームの署名とイニシャルなど複数を登録でき、同じメニューから削除もできます。
フォームの入力も
iOS 17以降、「ファイル」は多くのPDFの入力欄を自動で検出し、自動入力を提案します。欄をタップして文字を入力するだけ。保存済みの署名と組み合わせれば、1ページの申込書の大半はアプリなしで片づきます。
方法2:「メール」の添付PDFにそのまま署名する
添付ファイルを先に保存する必要はありません。「メール」にも同じマークアップのツールバーが組み込まれています。
- メールを開き、添付のPDFをタップして全画面で表示します。
- 右上のマークアップアイコン(ペン先)をタップします。または本文中の添付ファイルを長押しして「マークアップして返信」を選びます。
- 「+」→「署名」で保存済みの署名を選ぶか新しく書き、位置を調整します。
- 「完了」をタップします。署名済みのコピーを添付した返信が用意されるので、「返信」か「全員に返信」で送るだけです。
「メッセージ」、Safari(共有→マークアップ)、「メモ」でも同じ手順が使えます。どれも同じマークアップのツールバーと、同じ保存済み署名のリストを共有しているからです。
標準機能では足りなくなる場面
「PDFが送られてきた、署名して送り返す」というケースなら、マークアップは本当によくできています。ただ、次の4つの場面では限界が来ます。
- 書類が紙のまま。マークアップは、書き込む先のPDFがないと始まりません。窓口で渡された賃貸契約書や同意書は、まずスキャンが必要です。「メモ」の「書類をスキャン」でもできますが、2つのアプリを行き来することになり、署名欄にたどり着く前に切り抜きと傾き補正が待っています。
- 署名は「注釈」であって、ページの一部ではない。マークアップは署名を別のレイヤーに保存します。ファイルを開き直せば、署名は動かせるし消せる——あなたにも、送った相手にも。注釈を無視するPDFビューアやアップロード先も一部にあり、その場合は署名が黙って消えます。
- 複数ページの書類。12ページの契約書の全ページにイニシャルを入れるなら、「+」→「署名」→ドラッグ→サイズ調整を12回繰り返すことになります。
- 指で書いたサインは、指で書いたサインに見える。描画エリアは小さく、Apple Pencilなしでは本物の署名より震えた線になりがちです。書き直しはできますが、最初からやり直すだけで、保存済みの署名を修正する手段はありません。
方法3:スキャンした書類にScanivaで署名する
出発点が紙の場合や、署名を「上に浮いたレイヤー」ではなくページそのものに焼き込みたい場合は、Scaniva(バージョン4.5.0以降)で次のように進めます。
- 書類をScanivaに取り込みます。カメラでスキャンする、「写真」や「ファイル」から読み込む、または「メール」や「ファイル」の共有メニューから「Scanivaで開く」を使います。
- 書類を開き、「署名」をタップします。
- 初回は「署名を追加」をタップし、指またはApple Pencilで書いて「署名を使用」をタップします。Scanivaはそれを「保存済みの署名」に保存します。最大5件まで登録できるので、フルネームとイニシャルを両方用意しておけます。
- 保存済みの署名をタップするとページに置かれます。ドラッグで移動、ピンチでサイズ変更。必要なページで繰り返します。
- 「エクスポート」→「PDF」をタップします。署名はページ画像に統合(フラット化)されるので、取り外せるレイヤーではなく、書類の一部になります。
あとは共有シートが届く先ならどこへでも——メール、ファイル、AirDrop、LINE。気軽に転送されては困る書類なら、代わりにパスワード付きで書き出すこともできます。詳しくはiPhoneでPDFにパスワードをかける方法をご覧ください。
料金について
署名、パスワード保護、透かしはScanivaの完全版の機能です。買い切り¥2,000、サブスクなし、アカウント不要。無料版でもスキャンとPDF書き出しはできますが、各ページに小さなフッターが入ります。書いた署名も含めて、すべてiPhoneの中で処理されます。クラウドはありません。
どの方法を使うべきか
- メールで届いたPDFに署名を1つ入れて返す:「メール」のマークアップ。最速、無料、インストール不要。
- 入力欄のある申込書をダウンロードした:「ファイル」のマークアップと自動入力。
- 紙の書類:Scaniva。「メモ」と「ファイル」を行き来せず、スキャン→署名→書き出しを1つのアプリで。
- 署名を固定したい、ページ数が多い、イニシャルを使い回したい:Scaniva。書き出し時に署名がフラット化され、保存済みの署名はワンタップで呼び出せます。
スキャンしたその場で署名
Scanivaはスキャン、署名、パスワード保護、書き出しをiPhoneの中で完結させます。サブスクなし。無料で試せて、完全版は買い切り¥2,000。
よくある質問
iPhoneで書いた署名に法的な効力はありますか?
日本では、契約の多くは当事者の合意だけで成立し、押印や署名の形式は法律で決まっていません。そのため、業務委託契約、同意書、申込書、見積書の承諾といった日常的な書類なら、手書きの署名画像で実務上問題なく扱われるのが一般的です。ただし、電子署名法第3条の「推定効」(本人が作成したと推定される効果)は、認証局の電子証明書を使った電子署名が対象で、画像として貼り付けた署名には及びません。公正証書や一部の不動産関連書類など、方式が法律で定められたものも例外です。法的助言ではありませんので、迷ったら署名を求めている相手に確認してください。
iPhoneでPDFに無料で署名できますか?
できます。「ファイル」と「メール」のマークアップは無料で、ダウンロードも不要です。Scanivaの無料版はスキャンとPDF書き出しに対応し、署名機能は買い切り¥2,000の完全版に含まれます。
書類を撮った写真に署名を入れるには?
まず写真をPDFに変換します(共有→プリント→プレビューをピンチアウト、または「ファイル」で画像を長押し→「PDFを作成」)。その後マークアップで署名します。あるいはScanivaに写真を読み込めば、切り抜きと傾き補正をしたうえで「署名」→書き出しまで進めます。変換の手順はiPhoneで写真・画像をPDF化する方法で詳しく説明しています。
送った相手が署名を消すことはできますか?
マークアップの署名は注釈レイヤーに保存されるため、PDF編集ソフトがあれば誰でも移動・削除できます。Scanivaは書き出し時に署名をページ画像に統合するので、消すには画像そのものを加工する必要があります。
Apple Pencilを使うと違いますか?
はい。マークアップもScanivaもiPadでApple Pencilに対応しており、指先よりはるかに滑らかな線になります。iPhoneでは指のみです。コツは、横向きにして大きく書き、ページ上で縮小することです。